Ancient future

vol.03【リアル? 聞こえる音】Written by Shiryu



 なるほど、確かに他にも原因がなければ納得がいかないことがあるのです。それ
は、倍音が複数重なり合い、そこに自然なハーモニーが生まれ、ハーモニーがリズム
で動いてメロディーに変わるというだけならば、誰の耳にも聴こえていいはずだとい
うことです。
 初めてハンドドラムを持った人が体験できるのは希有な事だというように、誰もが
当たり前に聴こえているわけではないようなのです。二回目、三回目の参加で聴こえ
た人もいますし、それ以上の参加で初めて聴く人もいます。
 実際に鳴っている音ではないということなのでしょうか? あんなにリアルな音、
歌、音楽として聴こえているのに! しかも音の聞こえてくる方向まで感じるのに。

 ここに来て疑問に思うことは二つ。
 「リアル」と「リアルでないもの」の境界はどこにあるのでしょうか?
 私たちはどうやって音を感じているのでしょうか?

 夢を見て、それがいかにリアルな夢であっても、目覚めてみればそれが夢であった
ことが分かります。目覚めて感じる世界のリアルさに対して、夢のリアルさは比べる
までもないからです。
 ところが聴こえてくる音、歌、音楽は、世界のリアルさと比べて遜色ないのです。
 いくらリアルであっても幻聴だというのでしょうか?

 普通「音が聞こえる」ためには、三つのことが必要です。
 一つ目は音が発生すること。
 二つ目は音が伝わること。
 三つ目は聴取者が音を感じることです。
 紫龍がハンドドラム(TAR)を叩いたとしましょう。叩くことによってハンドドラ
ムの皮が振動します。これが音の発生源(音源)です。
 しかし、いくらハンドドラムの皮が振動しても、周りが真空であれば音は伝わりま
せん(叩く紫龍も死んじゃいますが(笑))。音を伝える物質が必要なのです。日常
の環境では、それは空気です。
 ハンドドラムの皮が振動すると周りの空気が皮とともに動かされ、圧力の高いとこ
ろと低いところが生じます。このような空気の振動、つまり圧力変化が、空気中を波
として四方八方に伝わって行きます(特にタールの場合は共鳴胴を持たないため音は
球形に拡がります)。
 この波が物理的な意味での「音」です!
 しかし、これだけでは、まだ「音が聞こえる」ことにはなりません。 空気の圧力変
化が私たちの耳に届き、神経信号に変換されて、さまざまな処理を受けた結果、初め
てハンドドラムの音として聞こえるのです。
 音を聴くとき、私たちは空気の圧力変化を意識しているわけではありません。
 聞こえる「音」には、大きさや高さ、音色といった、独特の性質があります。
 また「右前方で22インチのタールが叩かれた」というように、音源の位置や性
質、状態などが判断できる場合もあります。道を歩いていて、後ろから来た車を避け
ることができるのも音が聞こえるからです。話し言葉であれば、相手の意思や感情が
伝わります。さらに音楽を聴いたときのように、昂揚したり、落ち着いたり、さまざ
まな感情がわき起こったりする こともあります。ホラー映画で、足音が遠くから響い
てくる(近づいてくる)のが聞こえなければ、果たしてあれほど怖いでしょうか?
(笑)

 このように「音が聞こえる」あるいは「音を聴く」というのは、気の遠くなるよう
な複雑なプロセスなのです。このプロセスを解明するためには音響学だけではなく、
心理学、神経科学、情報科学などを総動員しなければなりません(うう、ますます深
みに)。

 続きは次回。

(8/19/2004)


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