人間の可聴帯域は20〜20000Hz(ヘルツ…1秒間の振動数)です。つまり 人間の耳は、1秒間に20回(非常に低い音)から2万回(非常に高い音)の空気の振動 を音として感じます。 特に1秒間に500〜4000回の範囲の音が特に良く聞き取ることができます。これは 人の話し声の高さに当たります(同種の仲間とのコミュニケーションということを考 えると、あたりまえというか、よくできてるというか(笑))。 この耳というのはどういものなんでしょう? 目は閉じれば視覚を遮断できますが耳はそれ自体では閉じることができません。意 識を向けるか向けないか、それによって有効な情報として認識するかしないか取捨選 択することができます。聞こえているが聴いてないという状態ですね(授業中こうい う状態で指されたりすると、困ったものです(笑))。一方カクテルパーティ効果の ようにどんなにうるさくても必要な音は聴くことができます。全身麻酔をかけていて も音だけは聞こえているという話も聞きます(臨死体験の「一部」はこの機能による ものだとか)。 太古の昔、危機を察知するのに「音」が重要な役割を担っていたことを考えると、 脳から外界に向けて張り出したアンテナである「耳」がこうした機能を持っていたこ とは容易に納得できる気がします。耳は常に振動という情報を探しているわけです ね。 「音が聞こえる」あるいは「音を聴く」というのは、気の遠くなるような複雑なプ ロセスですが、そのプロセスを簡単に追ってみましょう。 音は耳介(じかい)から外耳道(がいじどう)を通って鼓膜(こまく)にやってき ます。 ここまでは音は空気の振動です。そして、鼓膜を振動させます。 この振動は中耳の3個の耳小骨(じしょうこつ)とまとめて呼ばれる、ツチ骨・キヌ タ骨・アブミ骨を次々に伝わって行きます。ここでは音は固体の中を伝わります。 そして、てこのはたらきで、およそ振動の幅は20倍ほどに拡大されて、内耳のカタ ツムリのからのような形の蝸牛(かぎゅう)とよばれる器官に伝えられます。 蝸牛の中には基底膜という膜があり、鼓膜からの振動が伝わると、この膜も振動し ます。そのとき高い音では基底膜のうち蝸牛の入り口に近い方が、低い音では奥の方 が大きく振動するので、どの場所がどのくらい振動するかによって、音の周波数分析 ができるのです。基底膜には硬い毛の生えた有毛細胞という特殊な神経細胞が、びっ しりと並んでいます。有毛細胞は基底膜のその場所が振動すると神経パルス(一瞬の 電流)の列を発生し、有毛細胞につながっている聴神経に伝えます。神経パルスの大 きさはほぼ一定ですが、 頻度は基底膜の振動が大きいほど多くなります。こうして周 波数成分の強さが神経の信号に変換されます。さらに、およそ4〜5kHz以下の音の場 合、神経パルスは基底膜が一回振動する間の特定のタイミングで発生されます。これ によって周波数成分の位相も聴神経に伝えられることになります。つまり蝸牛は、パ ワースペクトルと位相スペクトルの両方をかなり正確に分析して神経信号に変換す る、スペクトル分析器なのです。 この蝸牛はリンパ液が満たされていて、この中にコルチ器という聴覚器(ちょうか くき)があります。ここでは音は液体の中を伝えられていきます。 そして伝えられた振動は、コルチ器の中の神経細胞を刺激し、神経衝撃に変えら れ、これは聴神経を伝わり延髄、脳幹を通って、大脳の左右側頭葉にある聴覚野と呼 ばれる聞こえてきたものを理解する部分にたどり着き、ここでやっと音として認識さ れます。 驚きなのは、こんな複雑なプロセスを私たちは一瞬の間にこなしているというこ と。 続きは次回
(8/24/2004)