Ancient future

vol.08【It returns to a start.】Written by Shiryu



 断続音の合間に雑音を入れたときに補完が成立して断続音が連続音として聞こえ
る、というのをハンドドラム(TAR)の場合に置き換えるとどうなるのでしょうか?
 
 連続音として聞こえてくるのは、歌とか音楽です。となると断続音はこの場合、ハ
ンドドラムを叩くアタック音ではないということのなります。アタック音の後に聞こ
えてくる倍音が断続音ということになります。そして、合間に入る雑音が補完される
べき音の周波数を含んだアタック音であると。
 なるほどそうなると確かに、倍音が複数重なり合うとそこに自然なハーモニーが生
まれ、ハーモニーがリズムで動くとメロディーに変わるという説明に納得がいきます
(が、色々検討した結果、元の説明に戻ってきてしまったぞ! むむむ、倍音の森は
深い、森の中をぐるぐる回って結局振り出しかぁ?)。
 何にしてもこの考えに基づけば、ハンドドラム(TAR)のリズム、例えば
MASMUDIの
12345678
D_D___T_D___T_E_ 
のうち、脳にとって解釈すべき重要な情報は「休符」だということになります。

 さて、音(歌、音楽)の謎は一旦置いておくとして、音(歌、音楽)の「方向性」
を感じるのは何故なのでしょう?
 音源定位を行うために脳が使うことのできる手がかりは主に三つのものがありま
す。
 1.水平方向の判断において主たる手がかりとなる両耳間時間差(ITD)
 2.両耳間レベル差(ILD)
 3.前後・上下方向の手がかりとなる頭部と耳介での反射・屈折
 の三つです。
 ITDは約 1500ヘルツ以下で水平方向の主たる判断手がかりとなります。人の頭の直
径を17 cmとすると、ITDは500μ秒ないし700μ秒程度となります。人は純音の場
合通常50−60μ秒の両耳間時間差が知覚できるため、角度にして10度程度の違
いを弁別できます。音の種類や訓練によっては、1-2度の違いが弁別できることもあ
ります(凄いね!)。
 ILD は回折の影響を受けるため周波数に依存し、比較的高い周波数において水平方
向の判断の主たる手がかりとなっています。頭部や耳介による反射・屈折は音源方向
と周波数に依存的するため、これが前後・上下方向の手がかりをあたえます。この際
の伝達関数は頭部や耳介の構造に大きく依存しており、個人差が大きい。
 しかし、いずれにしてもこれらの機能を介して方向性を感じているわけです。しか
し、これまで見てきたように本当に当てになるのかというと、どうにも怪しい。
 音源から二つの耳までの経路の差の最大値は約23cm。耳に到達する時間差、23cm
を音の周波数になおすと750Hz、これは右耳に入った音が早いのか、左耳に入った音
が早いのか、判別できない数値。低い周波数の音の時に方向感覚失わせる方法は、実
に簡単で23cmの差を複雑にすればいいだけ、音源が複数あればいいわけだ。セッショ
ン中はこの状態。
 結局、周波数間で統合された情報は、特定の時間差、従って特定の空間位置と対応
付けられ、運動コントロールと密接な関係をもつと考えられるが、複数の音源があり
うる場合には、どのような処理が行われるかほとんどわかっていないという。
 方向性についても結論でず! うーむ。  

 他に何かないのでしょうか? 空耳が研究されるようになったのは、19世紀になっ
てからのこと。当時から知られている現象に、音の周波数が実際とはちがって聞こえ
る現象(仮想ピッチ)や、両耳に少しずれた周波数の音を聞かせると空間的な動きを
感じる現象(両耳(りょうじ)ビート)があります。で、低周波の場合で、周波数に
差がある時、うねりやさえずりみたいに聞こえるときがあるという! それぞれの耳
からの神経出力がわずかに異なった周波数のとき、聴覚神経のニューロンの特殊な放
電でビートを感じるといいいます。これも、何らかの関与をしているのかもしれませ
ん。
 1960年代から70年代にかけて、空耳の研究は一転して黄金時代を迎えます。特に
Warrenは単語をくりかえし連続的に聞かせると、もとの単語とはちがって聞こえるよ
うになる現象(語変形効果)など、Deutchは音の高さと空間的位置の錯誤(オクター
ブ錯覚)などをはじめとする数多くの錯覚を発見しました。
 反復雑音といのもあります。雑音の断片を反復したものを聞き続けると、最初は単
なるサーという雑音に聞こえますが、そのうちくりかえしの周期が聞き取れるそうで
す。さらに聞き続けると、次第に様々なパターンが浮かび上がり、変形していくとい
う。人によっては「ドン、チン、シャー」というようなリズムが聞こえる場合もあり
ますし、話し声が聞こえるという人もいるといいます。
 探してみると、いくつかそれらしいモノは出てくるが、これという決め手はありま
せん。いずれにしても言えることは、物理的には全く同じ音であっても、それに対す
る聴覚の解釈は刻々と変わっているということ。

 続きは次回

(9/15/2004)


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